2013-12-11

[]tumblr 創世記 その二 ( tumblelog の巻 ) 22:14

http://taizooo.tumblr.com/post/370664889

世界開放流 - 動物的情報化 via KENMAT

本当に重要なことは、何度も何度も目にすることになる

今回はここから、始めます。この引用は私達にとって、すでに古典として重要なものとなっています。dashboard で繰り返し同じ post が現われることについての意味を、私達はここに見い出しています。

さて、この post がされたのは、2007/04/07でした。実は、 yuiseki サンが tumblr に join したのは2007/04/06でした。わずか一日でこの「動物的情報化」を書いた訳です。驚くべき洞察力です。どのように月面着陸よろしく、tumblr と向き合ったのかちょっと覗いてみましょう。

ここに興味深い post があります。その post は「動物的情報化」とほぼ同時期に書かれたものです。以下に全文を引用します。

世界開放流 - 流れるようにアウトプットする

流れるようにアウトプットする

なるほど。

たしかに。

だんだんこのサービスの良さがわかってきた。

情報を「収集する」という考え方はもう古いと思うが、それと同様に

情報を「発信する」という考え方も、もはや古いのかもしれない。

収集と発信。インプットとアウトプット。

何かが足りない。

そうなのです、 Reblog(スループット) が足りません。

先の「動物的情報化」にも「流れるようにアウトプットする」にも Reblog に関係するような言葉は全然見当りません。この時点では Reblog は存在しないのです。実は、「動物的情報化」も「流れるようにアウトプットする」も、リブログ紀(reblog era)以前の文章だったのです。

みんな大好き Reblog が誕生したのは、2007/04/27 に tumblr ver2 がリリースされた時のことでした。

このとき実装された機能は

  1. FOLLOW YOUR FRIENDS
  2. REBLOG STUFF YOU LOVE

http://gyazo.com/f55f24e38d3c4b7696fc395940c02c37.png

今や tumblr の代名詞である Reblog なのですが、これは最初から tumblr に存在する機能ではありませんでした。このとき始めて世界に Reblog が現われました。ハレルヤ。

さて、 Reblog が無い tumblr 。みなさんは想像できるでしょうか?

今の視点から見れば、Reblog が無い tumblr なんてどこが面白いんだ。としか考えることが出来ないと思いますが、それはあくまでも現在の視点に立って過去を見ているからに他なりません。ということで yuiseki サンが先程の「動物的情報化」を書いた2007/04/07まで時計の針を巻き戻してみます。

「動物的情報化」から大事な部分を切り出してみます。

http://yuiseki.tumblr.com/post/668523

自分の場合、Livedoor Readerを使うとき、

とにかく1日に数千件のエントリをひたすら「処理」する。一つ一つはどうでもいい。

情報のインプットに限らず、アウトプットにも同じことが言えるのかもしれない。

Tumblelog”(Tumbleは転がるような、崩壊したような、

一つ一つのポストは互いに脈絡のない”点”でしかないかもしれないが、 やがてそれら大量の点を通して自分の脳全体のアジェンダを可視化していく

2つのキーワード、 Livedoor Reader そして tumblelog

Livedoor Reader は2006/04/18に公開されました。それは2006/04/14に開催された Shibuya.js Technical Talk #1 で華々しくこの世にデビューしたようです。

Livedoor Reader の意味については、英語版の Livedoor Reader だった Fastladder のログインページに書かれていたという以下のフレーズを引用しておきます。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0707/04/news034.html

1000feeds in your sight

Livedoor Reader は、Web を読むという行為を、そのテクノロジーとインターフェースで極限までスピードアップしました。それは1000以上のフィードを読むこによって初めて見ることの出来る景色を、コアな Web ジャンキーに見せつけることとなりました。

tumblelog という言葉は、Wikipedia によれば、2005/04/12に why the lucky stiff によって書かれました。

Blogging has mutated into simpler forms (specifically, link- and mob- and aud- and vid- variant), but I don’t think I’ve seen a blog like Chris Neukirchen’s Anarchaia, which fudges together a bunch of disparate forms of citation (links, quotes, flickrings) into a very long and narrow and distracted tumblelog.

  • この記事を書いたのは why the lucky stiff である
  • Chris Neukirchen の anarchaia という blog を指して tumblelog と呼んだ
  • anarchaia は Ruby と Vooly という記法により書かれている

tumblelogRuby 界隈での出来事として一番最初に記録されています。また Jason Kottke が2005/10/19の記事に以下のような文章を残しています。

Many of the tumblelogs I ran across seem to be powered by Ruby on Rails, itself a quick and dirty programming framework that emphasizes fast prototyping. You can kind of see how tumblelogging is the blog equivalent of Rails.

tumblelogRails と並び称しています。tumblelog は、クイックでダーティーなブロギングフレームワークである。といったところでしょうか?

tumblr は先の、anarchaiaや, Projectionist といった初期の tumblelog にインスパイアされて作られたことが知られています。が、これについては、何千倍も良い記事があるのでそちらを示して終りにします。


さて、 anarchaia ですが、2005/03/27に一番の post がされています。ちょっと見てみましょう。

http://cache.gyazo.com/94778f0d078134157c5ecd22e06fb97b.png

ページ構造を見ればわかるように、link, flickr, lyrics という class 名が指定されています。anarchaia の記法である Vooly では、以下のとおり、最初期から以下の5つの型が考えられていました。

http://web.archive.org/web/20050804084129/http://chneukirchen.org/blog/archive/2005/04/thoughts-on-vooly.html

  1. Links
  2. Flickr images (photo)
  3. Quotes
  4. IRC quotes (chat)
  5. Lyrics

その後、thought (text) が、追加され6個の型を持っていました。

さて、tumblr はどうでしょうか?

http://gyazo.com/45deaeb958c24f9afa0500c38986dfbd.png

これについては、 tumblr 界の極悪非道なマッドプロフェサーである ku 氏がコメントを残しています。それはまるで、聖書の中の一文のようなフレーズです。

http://ku.ido.nu/post/90357787734/seven-tumblr-content-types

tumblrはpostの種類を7つにわけた。ふつうの文章、写真、引用、リンク、チャット、音楽、映像。

tumblr は当初、Text, Photo, Quote, Link, Chat, Video の6つ型を持っていました。その後 Audio が追加されて、最終的には7つの post の型を持っています。どうやら tumblelog において、この「post には型がある。」というルールは、大変重要な共通事項のようです。

さて、ここで宇宙が誇るネットウォッチャー otsune 氏の文章を引用しておきます。otsune 氏は 2007/05/09 に tumblr に join しました。こちらの post は 2007/05/12 という tumblr を使用し始めてすぐに、彼が残した感想になります。

http://www.otsune.com/diary/2007/05/12/1.html#200705121

だけどソーシャルブックマークにも弱点が有って、.jpgとか.gifみたいな画像ファイルを直接記録するのに向かない。これはただ単に、ソーシャルブックマークサービスがタイトルテキストしか表示しない事に割り切ったデザインをしているからなんだけど。

その点で言うと Tumblr_ は、さらに一歩踏み込んだ設計をしている。

「Text Photo Quote Link Chat Video」という6つの種類に特化して投稿することでリンクの仕方や見え方がばっちり来るようになっている。

モノクロなソーシャルブックマークと、七色に輝く tumblelog (tumblr)。

ソーシャルブックマークの歴史は del.icio.us が2003/9月に誕生したときに始まりました。

そして日本では、2005/02/10のはてなブックマークの誕生により一般化したと言えるでしょう。

この2007年の春の時点では、 Livedoor Reader といったフィードリーダーの普及が、「Web を読む」という行為を極限までスピードアップした一方、「Web に書く」という行為の受け皿として存在したのは url 単位という低い解像度のソーシャルブックマークと、スピードが遥かに遅いブログでした。

そういった時代に tumblelog という七色の衣を纏ってインターネットの金色の野に降りたったのが tumblr だったのです。

極限値にまで逹したインプット、旧態然とした低速度、低解像度なアウトプット。限界を越えた情報の雨と、溢れる欲求。まさしくそのような欲求に飢えていた、新し物好きの愉快な Web ジャンキーどもに熱狂的に受け入れられて、tumblr はそのデビューを飾ることとなりました。

そして、6年を経た現在でも、その七色の輝きはいまだ衰えを知りません。

さて、みんな大好き Reblog が、人々を混乱させ、惑わせ、魅了して、そして受け入れられ、私達の時代が訪れるのはそれ以降の話となります。そのお話については次回に続きます。