2013-08-26

科学的研究法 23:38

ダーウィンと出会った夏 p36-p38

「キャルパーニア、<科学的研究法>についてどんなことを知っているかね?」

「科学の授業はないのかね? 物理は?」

アイザック・ニュートンのことをきいたことがないのかい? フランシス・ベーコンは?」

「どうやら、学校では、この世界は平らで、世界の端から落っこちた船は竜にがぶりと飲みこまれていると教えているようだな」

「いろいろ話をしなくてはならんな。手遅れでないといいが。どこかにすわろう」

わたしたちはまた川岸にむかって歩きはじめ、ペカンの木立の隅の、すわり心地のよさそうな木陰を見つけた。そこで、祖父がいろいろな話をきかせてくれた。そう、びっくり仰天するような話しだった。たとえば、真理に到達するためのさまざまな方法について、話してくれた。アリストテレスみたいにただすわって考えるのではなくて、出かけていって自分の目で見るというやり方を教えてくれた。<仮説>をたてて、<実験>の方法を考えだし、<観察>によって判断し、<結論>を導きだす。それから、<結論>が正しいか何度も何度もたしかめる。祖父は<オッカムの剃刀>や、プトレマイオスや、天球の音楽のこと、何世紀ものあいだ人々が太陽と惑星についてどれほど誤った考えをもっていたかということを話してくれた。さらにリンネとリンネの命名方法について。リンネが、自然界のすべての生物に名前をつける組織的な方法を考えだしたことや、今もまだ、新しい種を発見したときにはこの方法で命名していることを。また、コペルニクスのこと。ケプラーのこと、なぜニュートンのりんごは上にあがらずに下に落ちたのかということをきかせてくれた。月がいつも地球の周囲をまわっていること。演繹法帰納法がどうちがうのか、そして、奇妙な名前のフランシス・ベーコンがいかに正しい方法を用いたか。それから、祖父は1888年にワシントンに旅行して、<米国地理学会>という名前の組織にくわわったことを話してくれた。会員は団結して、地球儀の上のまだなにも記されていない部分を埋め、迷信と時代遅れの考えのなかでもがいていたこの国をその泥沼からひっぱりだした。どれも、ハンカチや指抜きからはるかに離れた世界の、頭がくらくらするような話だった。祖父はこうした話を、眠気をもよおすような蜂の羽音と風に揺れる野の花に囲まれた木陰で、しんぼう強く語ってくれたのだった。

23:49

科学的研究法のことも、アイザック・ニュートンのことも、フランシス・ベーコンのことも、オッカムの剃刀のことも、演繹法のことも帰納法のことも、ましてやダーウィンの進化論も、全部あやふやだったので、夏はまだ来ていません。夏はいや、通り過ぎてしまったかもしれません。