ダブとは何だろう? ダブの強さとは何だろう?

思うに、音楽家と呼ばれる人々は、この世になかったようなメロディーやコードやリズムを生み出そうとする人々であるかもしれない。キング・タビーにはそういう音楽家としての志はなかった。だが、ひょっとすると、彼は知っていたのかもしれない。この世になかったようなメロディーやコードやリズムを作り出そうとする音楽家の限界を。僕はそんな風に思うこともある。

http://www.overheat.com/riddim/issues/no/300/dubwise_revolution/

ダブは新しい何かを付け足していくことよりも、すでにある何かを削っていくことから生まれた。反復するはずのベースラインが消える。ドラムのビートが消える。だが、聞こえるはずのものが聞こえなくなったその瞬間に、人はそのベースラインやドラム・ビートがそこにあったことをより強く感じるのだ。ダブはそういう意味では、記憶ということと深く結びついた音楽手法だとも言える。

http://www.overheat.com/riddim/issues/no/300/dubwise_revolution/

そういえば、こんな話がある。喫茶店で小さな音でBGMがかかっている。話に夢中で、あなたは何がかかっているかなど全然、意識していない。だが、BGMが一周して、同じ曲が二回目にかかった瞬間に、ああ、さっきもこの曲がかかった、と気づくことがないだろうか。一回目は意識にも昇らない。が、二回目にはハッとする。どうやら、人間はそんな風に音楽を聞いているらしい。

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過去の記憶と照らし合わせた時にスパークする何か。音楽というのは、それを巧みに使って、人々を高揚させるのかもしれない。ダブはそこをピンポイントで突いてくる。新しいメロディーやコードやリズムを生み出すことよりも、記憶を揺さぶることの方が、より深いグルーヴの中に人を誘いこむ力を持つということをタビーは誰よりもよく知っていたのではないか。

http://www.overheat.com/riddim/issues/no/300/dubwise_revolution/

via http://gkojay.tumblr.com/post/2396216842