「民族考古学」とは、「現代の行動の観察とそこから生じる物質的記録の分析を通し、考古学資料の生じた背景と資料の各属性との関係を研究する分野」と定義できる。

http://www.minpaku.ac.jp/staff/nobayashi/img/01_01.jpg

http://www.minpaku.ac.jp/staff/nobayashi/thema01.html

図は歴史科学に於ける推論の手順を図式化したものである。網掛けの部分は我々が観察することのできる範囲を示しており、これに含まれる三つの要素をもとに過去の行動や社会を復原することになる。これらの要素を連結させるためには、現代の行動プロセスを観察し、そこから生じる物質的記録との関係を明確にする道筋(1)、続いて、現代の行動から生じた物質的記録と考古学資料を比較し、その類似性を評価する道筋(2)、そして、考古学資料から過去の行動プロセスを推論する道筋(3)が必要となる。ここで導き出された過去の行動プロセスは、現在の行動プロセスと比較され検証されることになるが、あくまで過去の復原は(3)の道筋によって行わなければならない。しかしながら、(3)の道筋が独自に成立することは非常に難しいであろう。なぜなら、推論には必ず根拠となる事実が必要であり、その根拠として現代の知見が考古学資料の解釈に用いられることが多いからである。すなわち(1)の道筋が(3)の道筋には必要であり、この(1)の道筋を担う一つの研究分野が民族考古学である。

http://www.minpaku.ac.jp/staff/nobayashi/thema01.html